遠見書房のメルマガ

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2011年1月7日金曜日

あけましておめでとうございます。

 
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。



『日本人の知らない日本語』という本が,2010年のベストセラーリストに載っていた。

日本人の知らない日本語日本人の知らない日本語
蛇蔵&海野凪子

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知り合いから借りた本には,帯がついていて,「130万部突破!」と威勢よく書かれている。日本在住の,在日外国人向け日本語教師によるマンガエッセイというもので,なかなか笑えて,楽しい本であった。もちろん,マンガなので20分もあれば読めてしまうが,日本語勉強的にもとってもタメになった。なんて言うと,褒めすぎで語弊があるが,知らぬこともいくつかあった。この本のネタ元になっている日本語学の本をいくつか読んでいたので,膝の皿が割れるほど「なるほど」を連発したわけではないけれども。
興味深いのは,130万部という数字である。この本には続編もあり,これも100万部を越えているらしい。

日本人の知らない日本語2日本人の知らない日本語2
蛇蔵 海野凪子

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そもそも100万部を越えるようなベストセラー本というのは,「いったいだれが買っているんだろう」と不思議になるようなものも少なくない。たぶん,ふだん本屋に出入りしているような読者と,また違う種類の読者が買っているのだろうと思う。そういう層に売り込まなければ,100万という数字は難しいように感じる。
一方で思うのは,この100万越えの本が,日本語に関する本だということである。どうもこの本はテレビドラマ化されたらしいので(というか,どういうドラマになったのか……),その影響もあるかもしれない。とはいえ,売れていたから,ドラマ化するわけで,そうなると,日本人はまだまだ日本語に興味があるんだな~などという気持ちになる。どういう層が買っているのかはよくわからないが,こうした本が売れるのは,知的好奇心がまだまだ素地としてあるということだろう。

遠見書房主は以前,業界新聞の記者だったということもあり,いろいろと日本語文法の本を読んだ。一時期は,大学院に行って国文学でも専攻しようかしら,などと思ったものである(一時期で終わってしまったが)。けれども,いまだに日本語をマスターしているとは言いがたい。赤面してしまうような間違いをすることも少なくない。

ここ数年悩んでいることの一つに,「妻の呼称」がある。友人とのやりとりや,格式張った文章のなかであれば,さして悩むことはないのだが,現在は,その中間のあたりの「電子メール」がコミュニケーションのなかで幅を利かせている。当然,私の仕事も電子メールによって情報をやりとりしていることが多く,時には,「妻」のことを書く必要が出てきたりする。
そのときに,「妻」を何と呼べばいいのだろうか。
ま,妥当に「妻」でいいんでしょうけれど。でも,何となく「妻」というと,堅い感じもする。もう少しフランクに行きたいのだ。

刑事コロンボっぽく「うちのカミサンが」などと言ってみたいときもある。でも,まだアラフォーなので「カミサン」と言って,愛される年齢ではない気もする。

「嫁」という言い方もなくはない。ネット上だとわりに「嫁」という言い方を一種の冗談として使うことも多い(そういう場合「ヨメ」とカタカナで表記している)。封建的だと「嫁」という呼称が排斥されて,それを受けての冗談であろう。
間違えて,実際の会話で私の母親の友人相手に使ったら,「嫁とは何ですか」と怒られてしまった。

「嫁さん」だと,なんか郷ひろみの歌みたいだ。

「奥さん」という言い方もあるが,自分の身内に「さん」をつけるのも馬鹿みたいだな,と思う。でも,尻に敷かれている感が出て,哀愁を誘うところもあるかもしれない。

「ハニー」などとアホ面をしつつメールに記してみたい気もするが,きっといろいろなものを失うだろうと思う。「ベイビー」も同様。

英語系であれば「ワイフ」という言い方もある。最近は聞かないけれど,20代前半で勤めていた,当時60くらいの会社の取締役がジェントルな紳士然とした方で,「ぼくのワイフは~」と言っていた。悪くはないが,残念ながら私はまだまだジェントルでも紳士でもないので,似合わなさそうである。

20年近く前まで残っていた「愚妻」などという言い方も今は使われなくなった。使ったとしたら,人間性を疑われてしまうかもしれない。

「うちの大蔵大臣が」などという言い方もあったが,これだと,いまは「うちの財務大臣が」などと使うべきなのだろうか? それとも「官房長官」あたりが,一番の権力者だったりするのだろうか。

そもそも,「妻の呼称」には,ジェンダーの問題がつきまとう。なるべくならフェアな人間と見られたい欲望があり,できることならジェンダーフリーな人間であると思ってもらいたい。いちいち悩んでいるのも,そのせいである。
相手が私の妻のことを知っている場合には,妻は旧姓で仕事をしているので,その名前を使うというのが,よくある手だが,すべての人に使えるわけではない。
それゆえ,「同居人」という言い方を思いつき,わりに使っているのだが,子どもが生まれ,同居人が増えたので,混乱をしてしまう。同居人A同居人Bとしたこともあるのだが,もう意味不明である。そもそも文脈として「妻」とわかるような文意を,その文章が内包していればいいのだが,そうでないと,読み手の混乱を助長してしまう恐れもある。

「相方」と呼ぶのは,比較的若い世代のような感じがある。いいなあ,と思ってしまうのだが,関西弁で言うべきのような気もし,なんとなく使えない。「相棒」だと,水谷豊が出てきそうだし。BLじゃないか,それじゃ。

「うちのは~」なんていう言い方はあるが,これは封建的だしな。

以前,発言小町だったかと思うが,夫を旦那と呼ぶか,主人と呼ぶか,あるいはそのほかか,などという議論があり,盛り上がっていた。女性のほうも,いろいろと悩んでいるみたいだ。

うちの「妻」は,私のことを「パートナー」と呼称していた。
とある人から「パートナーと呼んでいる,その人は男性なの? 女性なの?」と聞かれたらしい。その人が言うには,英語圏では「パートナー」という場合,同性愛のカップルであることが多いのだそうだ。

結局,答えはいまだ見つからない。残念なことに,『日本人の知らない日本語』にも,あるいは他の日本語学の本にも,ベストな回答は載っていないままでありますね。



ともあれ,今年もよろしくお願いいたしまっす。

 

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