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2010年6月15日火曜日

ここのところの当たり本

あなたの職場のイヤな奴あなたの職場のイヤな奴
サットン I.R. 矢口 誠

講談社 2008-04-11
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「イヤな奴」とは,原題で言うと,Asshole。ケツの穴である。あんまり大きな声で言うべきことばではないみたいである。本文中だと,「クソッタレ」と訳されているが,さすがに日本語のタイトルにするのは憚れたのか。

なんちゅう本や,と思われるかもしれないが,これが,スタンフォードの経営学部の教授(経営心理学だそうである)が書いた本だとすれば,ご興味が湧くかもしれない。
話としては,まあ,簡単で,要するに,クソッタレを組織の中に入れても,長い目でみると生産性はよくないよ,というようなことである。クソッタレにもいろいろあるが,仕事ができようができなかろうが,クソッタレはクソッタレである,と明快に論じている。
ただ,就労支援などをされている方にとっては,腹立たしい話かもしれない。要するに,クソッタレとは,パーソナリティに問題がある一群のことであり,本文中のケースを見ると,いわゆる○○障害と診断したくなるような感じもあるからである。排斥することにもならないだろうか……という危惧もある。
とはいえ,読んでいると,とても耳が痛い。ああ,人のこと笑ってられないな,などと思ってしまった。作者も,自分のクソッタレぶりを披露しているが,それが本当にクソ野郎で,なかなか可笑しかったりする。比較して考えると,私はさほどクソではないかもしれない。なんて思っているのは自分だけだったりして。
産業カウンセリングの場面で,こういうところまでタッチできると面白いんだろうなあ,などと夢想してみたり。


空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
池井戸 潤

講談社 2009-09-15
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空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)
池井戸 潤

講談社 2009-09-15
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数年前に書評に出ていたのを何となく覚えていて,文庫になって購入。三菱自動車のトラックのタイヤが外れて死者がでた事件を下敷きにした小説である。
正直,いわゆる経済小説というか,企業小説ジャンルであり,さほど期待していなかったのだが,これが,ああた,オススメですよ。超絶面白エンタメです。気づいたら3時とか,そんな小説でありました。
このミスだとか,本屋さんオススメモノだとか,エンタメ系を時折読むのだが,はずれも多くて,ガッカリしてしまうことも多い。こないだは大量に平積みになっていたから,こりゃ面白いのか,と思って買ったら,なんかリアリティのない警察小説みたいなので,時間返してほしいと本当に思った。結局,当たり外れのないよく見知った作家ばかり買ってしまうところがある。しかし,ま,たまにはこういうあたりもあるので,読者人生は愉しい。
この本,人物がよく書けている。事件もよく書けている。いくつかのストーリーが交錯するが,どれも違和感もなく,進行する。自動車会社の内部の話よりも銀行の話のほうが面白いのは,作者が銀行出身だからだろうが,まあ,いい。
タイヤが外れてしまったトラックの持ち主である(そして事故に対して責任をもつ)運送屋の社長というのが主人公なのだが,なんか妙に肩入れしてしまった。
池井戸潤 は,山崎豊子を超える作家になるかもしれない。

 

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