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2010年4月12日月曜日

井上ひさしさん逝去

井上ひさしさんが亡くなったそうな。
75歳。

いろいろと考えたのだが,私が一番,影響を受けた作家といえば,たぶん,井上ひさしなんだろうと思う。井上ひさしの小説は,たぶん,ほとんど読んでいると思う。エッセイの類だと,半分くらいは読んでいて,戯曲はほぼゼロ(どうも,読みなれず……)。ともあれ,小説については,作品リストをチェックしたわけではないのだが,古本屋アサリなどをして集めていたこともある。

「ひょっこりひょうたん島」の台本を作っていたのが,井上ひさしである(と早逝した山元護久である)。当時の筒井康孝とか,小林信彦などという同世代の作家の日記やエッセイなどを読むと,「ひょっこりひょうたん島」を皆が面白がって見ている記述がよくある。すごい才能が現れた,というようなことも書いてあったりする。

井上ひさしの最初の処女長編は,「ブンとフン」である。

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児童文学としてかかれたものだが,この本は,さまざまな実験文学の要素が取り入れられていて,現代文学の最高峰の一つであると,個人的には思う。子どものときに読んでいたら,チンプンカンプンだったかもしれない。

この「ブンとフン」の上を行くのが,

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「吉里吉里人」は,多様な記述方法を使っていて,読み手を幻惑する。書くとか,ナラティヴとか,そういうものに興味がある人は,必読しておくべきものの一つであろう。と,もう,断言してしまう。
同時代の作家だと,筒井康隆のほうが圧倒的な人気があるだろう。筒井にはカルト的なファンが多く,評価も高い。筒井の『虚航船団』などは当時の現代文学の世界的な水準の中でも際立った存在だと思う。
だが,筒井康隆に比べても,井上ひさしがこの時代にやっていることは,かなり先駆的なものである。
とはいえ,のどかな(でも悲劇的結末が多い)小説群も多く,それがカルト的人気をえなかった要因なのかもしれない。土着的な要素も強いし。

日本語そのものに井上ひさしは興味があり,それが色濃く小説にも投影されているが,日本語や文章に関連するエッセイや論評も数多い。かなり強迫的な人なので,外れが少ないのも特徴である。

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最初に読んだのは,中2の夏だった。
私はその夏に,

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を読んだ。家族旅行で行った富士五湖旅行からの帰り道の,高速バスの車中にて,だった。本が嫌いだった私にとっては,本当に大した偉業のように思えた。まさか,将来こんな仕事につくことになるとは……

合掌。
 
 

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