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2009年8月24日月曜日

がんに負けない心理学──そして、ジョウさんのこと

 
和田憲明先生の「がんに負けない心理学」の本をいただいたのは、一月ほど前のことである。和田先生ご本人からも「軽~く」ご紹介をいただいていたのだが、本をいただいたのは、和田先生のその本の担当編集者の奥様である、ある臨床心理の方であった。いろいろなツテが絡み合い、ともあれ、その本が送られてきたのである。

和田憲明先生のことは、知っていた。知っていた──だけではなく、一度、ご一緒に飲んだこともある。前回紹介した東豊先生の『家族療法のヒント』に書いていただき、その出版記念飲み会というか、そういう席上で、お会いしたのである。
そもそも、この本は、牧原浩先生という家族療法というべきか、統合失調症論というべきか、の、天才的な精神科医がいて、その薫陶を受けてきた方々が、牧原先生のために書いたものである。牧原先生の建てられた理想的な精神科病院ともいえる小郡まきはら病院で働いたことのあるスタッフが、執筆者の多くを占めており、東豊先生はもちろんそうであるが、和田先生もそこのスタッフであった。
和田先生は若々しく元気な人であった。C調というと語弊があるかもしれないが、茶目っ気で、愛嬌のある、だれからも好かれそうな、そんな方であった。実際にお会いする前も、他の本でご一緒したことがあり、牧原先生のための本においても電話などで打ち合わせもしたので、初対面という感じはなかったのかもしれないが(私は学会上で見かけたことがあった)、初めて会う私にも、ずいぶん前からの知己であったかのように接してくれた。

その和田先生ががんにかかった、しかもステージⅣで、かなり状態が悪い、そんな状況で、がんと臨床心理学の本を書いた──という話を聞いたのは、本をもらう1週間ほど前のことだった。
私は愕然とした。元気そうな本の紹介メールもいただいたし,本の企画をもいただいていたし,何かいろいろと気遣っていただいたメールをもらったばかりだったからだ。そして,和田先生とがんというのがなかなか結びつかなかったというのもある。がん性格というものがあるそうだが,それとは遠いような,鮮やかな軽さが和田先生にはあった。
本をいただき、本のカバーのそでについていた著者近影を見て、またもや、愕然とした。愛嬌のある笑顔はそのままだったが、抗がん剤の影響なのか、ずいぶんと老け込んでおられたように見えた。

これが、その本である。



この本は、ある日突然、がんを──しかも、ステージⅣという診断を受けた臨床心理士が、その心の回復過程と、いかにがんに対してポジティヴな視点を作っていくか、ということを、とてもわかりやすく、一般の方も読みよいように書かれた本である。
回復といえども,まだどういう状況はわからないが,がんと戦う,明るくも,壮絶な記録としても,とても読み応えのあるものだ。

そして,和田先生は,まだがんと戦っておられる。


ぜひ、ご興味のある方は……

といって、ふつうではここで、アマゾンへのリンクをつけるところだが、今回はそんなことはしません。

実は、小社は、この本を現在、20数冊、仕入れました。
和田先生の周辺の方達が、草の根的に、この本を広めたいと活動をしているのですが、私もこの活動のお手伝いをすることにしました。

この本、遠見書房で売ります。
ぜひ、買ってください。

遠見書房では、著者割引で本書を購入しました。この価格に、送料と郵便振替手数料を加えさせてもらって、

1,300円(税込)

で販売しております。

アマゾンですと、この本は1200円(税込1260円)ですから、送料無料にはなりませんから、ちょっとお得かと思います。

もし、一緒に遠見書房の本をご注文いただければ、送料と振替手数料は不要で、

1080円!

で、販売いたします。
別に儲けなくてもいいので。

部数としては、手元にいくらもないですが、ぜひ、ご注文いただけると、ありがたいです。

ご注文は、

tomi@tomishobo.com

へ。

お名前
ご住所
お電話番号
と、「和田先生の本、希望」と書いて、お送りください。
電話やFAXでも承っております。


こうした本は長いと読むのに疲れてしまうのでしょうが(とくに患者さん本人はそうかと思います)、私は1時間もかからず読めました。
ポジティブシンキングを生む心理テクニック的なことも書いてありますが、当事者じゃないとわからないことも踏まえていますので、とても役立ちそうです。
病棟や待合室に、さらりと1冊置いてあると、嬉しいかもしれません。

===

昨日、実は、以前勤めていた会社の上司だった、城市さんの葬式に行ってきた。享年55歳。がんだったらしい。ものすごい酒飲みで、僕がその会社にいたころ、15年ほど前には、一日で一升くらい飲んでいた。朝はたいてい酒臭かった。タバコもがんがん吸っていた。ハイライトだったと思う。城市さんは、皆に好かれていたのかどうなのかわからないが、僕は好きだった。一緒に何度酒を飲んだろう。会社にいた3年弱の間に,100回とか、そんな数字になりそうだ。それでいて、僕は一銭も払ったことはなかったように思う。
僕はジョウさんと呼んでいた。仲のいい人はそう呼んでいたように思う。話の通りがよくて、酒に強くて、いろんなところにコネがあって、新聞記者らしい人だった。
そう、僕は会社を辞めるとき、退職届をこのジョウさんに渡したのだった。「まあ、わかるよ」と言い、「でも、預かっておくだけだからな、気が変わったら言ってくれ」と言った。僕の気は変わらず、会社を辞め、新聞記者も辞め、出版社に入り,編集者になった。

ジョウさんは数年前にすでに余命数カ月と宣告を受けていた。それでも、つい最近までタバコは吸っていたという。たぶん、酒も飲んでいただろう。死ぬ前日までふつうに働いていた。夜中に咳が苦しくて自分で救急車を呼んで、通っていた病院に行ったのだそうだ。そして、そのまま死んだんだそうだ。がんの疼痛などどうしていたのだろう。それにしても、壮絶だと思う。ジョウさんらしいといえば、それらしい。かっこいいぜ、ジョウさん。でも早死にすぎるよ。
 

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 和田先生の本は出版早々に書店の本棚で偶然目にして読みました。私自身も、末期癌告知を受け、人生のロスタイムを生きている臨床心理士です。実際にこういう立場になると、ああなるほどという発見が続きます。
 同じ異界に住む同病者に不思議と出会うようになります。人間世界に仮の姿で過ごす超能力者集団のようです(笑)。そして自助グループではないですが、わかちあう機会が不思議と訪れます…。
 異界に住み始めて思うのは、自分の個人心理がどうのではなく、関係の中で生きている自分であるのだなあとしみじみ。