遠見書房のメルマガ

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2009年6月1日月曜日

お一人様でどうですか?

 
編集者の仕事はいろいろとある。雑誌を作ったり、書籍を作ったり。専門書編集者の仕事は限られているが、それでも、「臨床心理学」という雑誌を立ち上げたり、鈍器(?)のように分厚く大きい本(「詳解 子どもと思春期の精神医学」)を作ってみたりと、いろいろと経験してきた/させてもらった。挙句の果ては会社まで作ったのだから、編集者としては一通りの(?)ことはやってみたような気になっていた。

ところがである。

そういえば、辞典・事典類を作ってはいないな、とはたと気づいたのである。

昔から事典を作りたいと思っていた。
キーワード集みたいなものはいくつか作った。

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企画だけで制作にはタッチしていないが、

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なんていうのもかすったくらいはしたが、やはり、編集者として生まれてきたからには(生まれてないって)こんな大辞典を作りたい。

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と思うのです。

やりたい。
大変そうですけど、やってみたい。。

あの分野とこの分野とその分野なら、やれそうだな、という腹案もある。
メンバーもうっすらと思い浮かぶ。

当然、事典を作るのはけっこう大変なんですけれど、マネージメントする能力はまあ、あると思う。大量の執筆者を抱えるのは雑誌や大きい本で慣れているし、ネットは便利になったし、製作技術的にもまったく問題はないし、煩雑な作業を合理的かつ建設的に行う知恵(?)もある。用語を一つひとつさらう根気もけっこうある。嫌いではない。

が、しかし、先立つものがない。

要するに資金ですね。これがまだまだ潤沢とは言えないので、踏み切れないでいる。

事典は、やっぱ、お金がかかるんですね。

まあ、たとえば、××学についての事典を作ろうという話になったとします。B5判で800ページのものとかにしますわな。
まずはその分野の碩学なり、政治的な主導者に声をかけるわけです。で、その方を中心に3~4人のメンバーを集めて、編集委員会を作る。
このメンバーはやはり政治的にも地理的にもばらけていたほうがいい訳ですね、当然。
主導者Aさんと、その弟子筋なんていうメンバーだと、色がつきすぎる。AさんのライバルBさんなんていうと、あとで大変になりそうなので、Aさんとは仲はいいが、それなりに違う立場のCさん、Dさん、といった感じでメンバーを決めるわけです。
で、集まるわけですが、手弁当というわけには行きません。交通費だってお支払いする必要があります。編集会議をするんであれば、会議室なんかも使う必要がありますね。食事時でしたら、食事を頼む必要もある。オムスビ4つとタクアンひとかじり、というわけにはいかない。松花堂弁当くらいは用意したい。当然、日が暮れているならば、ちょっとアルコールでも、ということにもなる。
場所は皆が便利なところ。地方の方もおられるのならば、東京駅とか品川駅とか。会議室ドットコムなんていうのもありますが、まあ、ちょっとはカッコウをつけたいですから、ホテルの会議室なんて借りてみたい。
となると、まあ、そうですね、一回の会議で少なくとも会議代だけで20万くらいは見ておきたい。メンバーの地域が広がれば、交通費はもっとかかりますし。
しかし、事典です。項目数が1000だとしても、それをあげるのに一日でできるわけはない。それから、それぞれの書き手を決める必要もある。つまり、会議は、数回行う必要があります。一回じゃ収まりません。3回は必要でしょうか。3回やるとしたら、60万の出費です。

で、執筆者が決まりました。100人います。それぞれの方に依頼状を送る、となると、それだけで1万円。作業としては一日仕事です。返信用の葉書を入れると、15000円くらいかかります。校正刷などの送付にも同額以上の金額がかかりますね。

まあ、こんなものは知れたものです。
問題はこの次。

で、できた本が800ページのB5判だとしますと、この印刷代がものすごくかかるわけです。
計算してみたことないですけれど、1000部刷って、500万で足りるのかな……。

本って、書店さん経由の場合、売れてから半年後に入金という、まあ、何それ、という商慣習がまかり通っている世界なのですが、その半年のタイムラグを考えると、印刷代以上の資金がプールされていないと、経営的には厳しいものがあります。

もちろん、人件費もかかります。
それ以上に時間も。。。


うーん、難しい。

バックに学会などに入ってもらって、学会監修の事典なんていうものができるのなら、会議費が不要になるので、これはありがたいかもしれません。売れ行きも読めるので、500万も投資できるでしょうし。
なんて、夢を見たりし。

うーむ。ただの夢だしな、これでは……。


なら、一人事典なんてどうですかね。

実は以前からある大家の先生に「一人で事典を作られてはいかが」とお願いしていた。でも、そのお願いからもう10年近くたつ。会うたびに「すまぬすまぬ」謝っておられるが、執筆されているのか、その気配はない。

とはいえ、一人で事典を作るのは、学者の夢ではないかと思う。名遂げた末の夢。
いや、なんか勝手に夢を押し付けているみたいで申し訳ないが、400項目、500ページくらいの中版の一人事典なんてあったら面白いなあ。
500ページまでいかなくとも、その半分くらいでも十分だ。
このサイズなら、比較的小さな学問体系でもできなくはない。「自殺」とか、「DBT」とか、「対象関係論」とか、「河合隼雄」とか。キーワードが200くらいあがれば、いいのだろうか。

ぜひ、我こそはと思う方は、どうかおっしゃってください。お手伝いします。

 

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