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2009年6月30日火曜日

児童ポルノ法改正案がすごいことになっている

 
あちこちのニュースで取りざたされていますが,児童ポルノ法の改正案がすごいことになっています。
審議のまとめスレは,以下を。


http://source-stat.blog.so-net.ne.jp/2009-06-26-1


自公案は,とくに無茶苦茶で,単純所持まで違法だそうで。HDDに入っていたら,それがケーサツに見つかったら逮捕みたいですよ。イヤな教師のPCのHDDにこっそりとコピーすんの流行るかもしれないっす。

それが通れば,

宮沢りえの「サンタフェ」も発禁。

男子も乳首出たらダメならしく,「ウォーターボーズ」とかも発禁。ジャニーズも×。

服着ているとか着てないとか関係ないらしく,どっちもポルノ認定される可能性もある。

ムーアの代表作の一つ「思春期」なんかも,当然,発禁。


ちなみに,所持禁止なので,家中をあさらないとまずいです。昔の週刊誌なんかが出てきて,そこに17歳(くらいに見える)のセミヌード写真とかがあったらアウトっす。男性だけじゃないですよ,女性も探したほうがいいです。

児童ポルノ法改正を大賛成をしているアグネス・チャンさんのアイドル時代の水着写真なんかモロアウトです。

あまり,児童ポルノ法改正に難癖をつけると,「あんた,ロリコン?」みたいに思われるので,発言が控えられているのも,こんな悪法が通りそうな背景にあるのかも。

所有者罰っするって,アホじゃないかと。
基本的には出版社などを罰することを繰り返すしかないでしょう。
アメリカみたいに,ワンクリ逮捕(ロリコン画像をダウンロードしようとぽちっと押すと,警察につながるというおとり捜査)みたいになると,なんかひどい世の中だという感じがする。

エロスと芸術の境をつけることなんて,政治家にできるのだろうか。できるわけはない。

上のブログの発言要旨を見ていると,国会議員とか,もう全員交替でいいよ,という気分になりますね。もう,くじ引きで決めればいいじゃん。そっちのほうがまともな人間が集まると思う。頭,悪すぎですよ。

諸外国は……とかいうけれど,日本ほど性犯罪の件数が少ない国はない。これは統計的にも明らか。これは,対児童犯罪でも同様。要するに,いまのままで十分というか,諸外国の方々が日本見習うべき,みたいな話じゃないかと。

なんていうことは,議論にならない。

エビデンスとか何なの? という気分になる。

 

2009年6月25日木曜日

【遠見書房主謹製】専門家のための「本を書こう!」入門【PDF出版】

 
こういう本を出しました。

『専門家のための「本を書こう!」入門』


本といっても、紙ではなく、PDF出版です。電子書籍ですね。

DL-Marketというサービスを利用して、ダウンロード購入できるようになっております。
遠見書房のメールマガジンにご登録の方には600円で、そうでない方には1,000円にて販売しております。メルマガ購読者にのみわかるパスワードがかかっていますので、ご注意ください。新規読者の方でもメルマガに登録していただければ600円で購入できますから、ぜひ、この機会にメルマガにご登録くださいませ。

なお、DL-Marketにはアフォリエイトがあるらしいので、ブロガーの方など、御ブログ等でぜひぜひご紹介いただければありがたいです。

通常の書籍ではないので、いきなり「買い方」から説明してしまいましたが、詳しい内容は、小社のHPにあります。

また、ダイジェスト版もありますので、ご高覧いただければありがたいです。


まっ,かいつまんで内容を説明しますと、いわゆる専門家──研究者の方や実践家、実務家の方々が「本≒専門書」を作るときには、どうしたらいいか、ということが述べられているものです。
事細かに。

本を出したい、出さなくちゃいけないという方は、ぜひ読んでいただけると、専門書の生成過程というものが理解できるのではないかと思います。一人で書く単著から,論文集,複数で書く編集もの,教科書,翻訳などなど,どう企画をたて執筆を進めればいいのかが書いてあります。書き方やら発想法まで詰め込みましたので,内容的にもなかなか奥深いものになったような気がします。


なんていうことを言っていて口幅ったいのですが、この本を書いたのは私です。

当初は、とある恩人たる先生が開いてくれるという新会社設立パーティーの引き出物としてこつこつ書いたのが、この本です。ところが、パーティーの開催はさまざまな要因がありまして延期となりまして、現在に至る、という状態で、原稿だけが上がりました。
PDF出版って、どのくらい品が動くものだろうかと、実験もしたかったし、PDF出版のほうがコストは安いというのもあって、こういう形の出版となりましたが、けっこう売れれば紙にしたいな、と思っていたりします。


本を書くことは、人生を変えます。これは本当にそうです。ある本を出し、狂い咲きというくらい、世界が変わってしまった方もいます。ある本を出したおかげで、重要なポストに就いたという方もいます。ある本を出したがために、職を追われた方もいました。まったく以前と変わらないという方はほとんどいません。
(専門書の、と言い切るべきかわかりませんが)編集者という商売は、そういう人生が変わる場面に立ち会っています。しかし立ち会っているだけです。助産師さん(産婆術!)なんて言いたいところですが,出産時の夫みたいなものかもしれません。

書き手が、ましてや編集者がコントロールできないところに、本はあるように思います。本は生き物です。だからこそ,これだけ本があるのでしょう。

もし、チャレンジしたいという方がありましたら、ぜひ、本書を読んでください。そして、書き出していただければ、それ以上の喜びはありません。

 

2009年6月24日水曜日

F氏の本

 
F氏から激励のお電話をいただいたのは、ついこないだのことである。
F氏は精神科医である。以前、編集モノのある本(未刊)において、原稿の依頼を行ったことがある。とはいえ、それは手紙とメールとのやりとりくらいであり、お会いしたことはない。お電話をいただいたことも一度くらいはあったかもしれないが、思い出せない。
ともあれ、F氏は私に連絡をくれ、「頑張ってくれ」とエンパワメントしてくださった。初めてご連絡をいただいたので、私のほうはしどろもどろだったのだが。
遠見書房から刊行された『専門家のための「本を書こう!」入門』について、「一年前ならば、本を出す前だったので、読みたかったかもしれない」とおっしゃっていた。
F氏は、「その本、読みました?」といわれるので、「いや、まだです……」と答えると、「じゃ、送りますよ!」と言うのである。

こういうとき、とても困る。小心な私は、「お返しどうしたらいいのだろう」とか、妙にそわそわ考えてしまうのである。といって、断るのもおかしい。「そんな本、読みたくない」と言っているみたいに聞こえてしまうかもしれない。編集者としての態度としてもおかしい。そもそも本は好きだし、どんな本か興味もある。といって、売値のついているものをただでもらうというのも悪い気がする。じゃあ、買うか、と言われると、悩んでしまうし。などと逡巡してしまうのである。

数日後、F氏から本が届いた。

認知症の医療とケア―「もの忘れクリニック」「もの忘れカフェ」の挑戦認知症の医療とケア―「もの忘れクリニック」「もの忘れカフェ」の挑戦
藤本 直規

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本をいただくとぱらぱらと読む。略歴などを読み、カバーなどを外してみる。へえ、こういう紙使っているんだ、面白いなどと一人ごちるためである。そうやっていつもと同様にパラパラとめくってみると、とても品のよいレイアウトであった。
帯のような、カバーのような装丁だが、これも洒落ている。レイアウトされた内容もよい。値段も安めであり、ふつうに売れそうである。帯についている推薦の句は認知症、高齢者精神医学の大家、室伏君士先生である。もう90歳くらいではなかろうか。昔、10年以上前に室伏先生の本にセカンドエディター(要するに雑用)として加わったことがある。お元気ということがわかり、それも嬉しかったりする。

痴呆老人への対応と介護痴呆老人への対応と介護
室伏 君士

金剛出版 1998-09-15
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さて、F氏の本であるが、「認知症のかもがわ」の本なので、変な本であるということはまずない。版元の力は大きい。タイトルは硬めだが、中は読みやすい。この本は、F氏のつくった藤本クリニックでの、物忘れ外来、地域医療、デイサービスなどの活動をまとめたものである。ピアカウンセリングや「物忘れカフェ」という活動も行っていて、活動もとても面白そうだ。

はっきり言って、この本は役に立つ。実務家が書いた、実務家のためのいい本である。F氏は、視点の広い方だな、ということがわかる。精神科や高齢者医療の医師としての目線だけでなく、介護職や作業療法士、MSW、心理職などのコメディカル・スタッフの目線でもとらえ、高齢者たちを支えている。ここまでの幅広い活動ができるのは、チーム医療のツボをご存知だからだろう。

類書はこんなのか?

「ラッコ先生」と呼ばれて―私が実現した病児保育所から老後のケア・ハウスまで (Hot‐nonfiction―Yuhisha woman president series)「ラッコ先生」と呼ばれて―私が実現した病児保育所から老後のケア・ハウスまで (Hot‐nonfiction―Yuhisha woman president series)
酒井 律子

悠飛社 2004-03
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ちょっと違うか……。


それにしても、私は認知症関係の本を読んでいるとしみじみとしてしまう。F氏の本の内容は基本的に明るいのだが、私は20年前に死んだ祖父をダークに思い出してしまうのだ。祖父はアルツハイマー性の認知症であった。認知症の事例を読むと祖父のことを思い出す。祖父は10年ほど家庭で介護され、そのあいだにだんだんと認知症が進み、家にいた最後の半年くらいは悪夢のようであった。まだ75歳であった。いま75歳くらいの先生方とお付き合いしているが、祖父と同い年とはとても思えない。祖父は徘徊をするようになり、身の回りの世話もできずオムツをあてがわるようになり、手におえなくなり、家族はウツになり、老人病院に入れられ、あっという間に寝たきり老人となり、ガリガリにやせて、死ぬ間際にはだれのこともわからず、肺炎をこじらせて死んだ。そんなことが走馬灯のようによみがえる。
いま生きていたら、もっといろいろなサービスがあったのになあ、と思う。物忘れカフェ、いいじゃないですか。祖父は小さな店の店主であったから(かなり痴呆が進んでも計算能力だけは温存していた)、レジ係くらいできたかもしれない。

ともあれ、この本はとてもいい本です。
「真似」もできそうなほど、具体的にいろいろと書いてくれています。

なお、F氏が本と一緒に同封してくれた手紙にはこうあった。
F氏は小社のブログをときどきみてくれているようで、ペーパーの隅っこに谷川俊太郎の記事(注)について、「面白い」とおっしゃっていた。
そして、ペーパーの隅っこにこうあったのだ。

私は平成元年のH氏賞の受賞者です。


ぬわんと!――知っている人は知っているであろう、H氏賞とは、詩の世界の、芥川賞というか、直木賞というか、そういう高名な賞である。

私の青春と詩について、うだうだと書きたい欲望にかられるが、どうでもいい話なのでやめておきますが、藤本直規先生のことをF氏などとしたのは、ただ、H氏賞受賞者ということに感銘をうけたからだけのことであります。

とはいえ、この本の文章には、詩的なところはあまりありません。硬質ですが、わかりやすい文章です。本物の詩人はこうなのかもしれませんね。

 

2009年6月18日木曜日

【雑誌】子どもの心と学校臨床【創刊】

 
お久になっております。遠見書房でございます。

唐突でありますが(というか、準備は着々としていたのですが)、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、教育相談担当の教諭、養護教諭、特別支援担当の教諭、こころの教室相談員などなど、……学校の「こころ」関係の皆様に向けた雑誌を8月に刊行します!

子どもの心と学校臨床 第1号

雑誌ですので、刊行頻度というものがありますが、年2回2月8月に発行いたします。
A5版・並製の体裁で、1,470円(税込)。頁数は150頁の予定です。



詳しくはhttp://tomishobo.com/catalog/ca04.html

なお、雑誌のパイロット版を用意しました。
こちらからダウンロードしてください。(PDFになっています)
「へええ、こういうのなんだ」というのがわかるかと思います。
上記アドレスにリンクがあります。

ぜひ、定期購読をお願いいたします。


とはいえ、ま、内容ですよね。
個人的に学校臨床に対する思い入れは強く、村山正治先生などに頼み込みまして、この雑誌の立ち上げにいたった次第ですので、力を入れています。編集者として、学校臨床にはかなりコミットしてきたつもりですし、本なども作ってきましたが、その粋を集めて、最高の筆者を集め、まとめてみました。

創刊号の特集は、初学者に向けたものを用意しました。かなりの知見を詰め込みましたので、この号はお買い得です。しかもわかりやすい。
目次予定は以下の通りです。

特集:学校でうまくゆく心理アプローチと考え方
学校におけるグループ実践と展開 ■ (九州大学名誉教授)村山正治
学校のなかでのコミュニティ・アプローチ ■ (九州産業大学)窪田由紀
保護者とどう付き合うか――家族療法の視点から ■ (東京大学)中釜洋子
認知行動療法で子どもと向き合う ■ (新潟大学)神村栄一
ブリーフセラピーで学校問題に対応しよう ■ (目白大学)黒沢幸子
ストレスマネジメントとリラクセーション ■ (兵庫教育大学)冨永良喜
転移と逆転移からSC業務を考える ■ (愛知県立大学)祖父江典人
ユンギアンの考え方を学校に生かす ■ (京都文教大学)高石浩一
集団への視点とスクールカウンセリング ■ (明治大学)諸富祥彦


これが特集。いろんな学派の方が学校にコミットするわけですが、おいしいところを集めています。

そして、連載ですが、一人の方の連載は、以下です。


発達障害のある子どもたちの家庭と学校
(1)発達障害があるということ ■ (中京大学)辻井正次

近頃のシシュンキ(1) ■ (島根大学)岩宮恵子


この2本。
辻井先生といえば発達障害における名古屋学派の棟梁というべき方。真に実践的な臨床を目指しておられます。上記連載論文を読みつつ、膝叩きまくってしまいましたよ。

岩宮先生の連載は、エッセイです。笑いあり、涙ありなのですが、透徹に見据えておられますからね、あなどれません。


そして、リレー連載はこのようです。

相談室の子どもたち(1)子どもの成長力 ■ (放送大学)滝口俊子
学校をめぐる問題と対応(1)君はモンスターペアレントに対応できるか? ■ (龍谷大学)吉川 悟
【文献再録】読んでおきたい論文(1)スクールカウンセリングにおいて「絶対誰にも言わないで」と訴える二事例 ■ (にいがわクリニック)東 千冬
この本,読むべし――自薦式ブックレビュー(1) ■ (神戸大学)森岡正芳
書評 衣斐哲臣著『子ども相談・資源活用のワザ』 ■ (首都大学東京)長沼葉月


以上予定ですが、硬軟取り合わせて、学校の今、臨床の肝をお伝えできればと思います。子どもと家族と地域とさまざまな視点で切り取っていくつもりです。
ぜひぜひ、読者として、あるいは発言者としてもご参加ください。


第2号もこんな感じになっています。以下は目次予定です(あくまでも予定ですので)

特集:学校の中の発達障害の子ども:クラスに発達障害のある子もいるというあたりまえの現実の中で

学校における発達障害のある子どもたちのための「あたりまえの」サポート作戦
 ■ (中京大学)辻井 正次
生物学的精神医学から見た「発達障害であること」 ■ (浜松医科大学)中村 和彦
学習から発達障害のある子どもへのサポートを組み立てる
 ■ (浜松医科大学)藤田 知加子ほか
発達障害のある子どものための学校環境の調整 ■ (宮城学院女子大学)白石 雅一
発達障害のある子どものためのゆったりした学校生活づくり
 ■ (岐阜聖徳学園大学)小泉 晋一
発達障害のある子どものための楽しい人との関係のある学校生活作り
 ■ (東海学院大学)明翫 光宜
発達障害のある子どもの性と関係性の教育 ■ (名古屋大学)川上 ちひろ
            (あいち小児保健医療総合センター)杉山 登志郎
発達障害のある子どものサポートのための保護者との共同戦線の始め方
 ■ (山口大学)木谷 秀勝
教師のための発達障害の基本的知識 ■ (鳥取大学)井上 雅彦
発達障害のある子どもにとっての難しいサポート体制の体質改善術
 ■ (浜松医科大学)中島 俊思


特集は再び辻井先生にお願いしてしまいました。
これは役立ちますよ。発達障害は難問続出中ですから。

連載はこんな感じ。

発達障害のある子どもたちの家庭と学校(2) ■ (中京大学)辻井 正次
近頃のシシュンキ(2) ■ (島根大学)岩宮 恵子
相談室の子どもたち ■ (日本女子大学)鵜養 美昭
学校をめぐる問題と対応:いじめ――中学生の場合 ■ (京都教育大学)本間 友巳
この本、読むべし(自薦式ブックレビュー) ■ (文教大学)岡村 達也
【観点】学校からの報告(1)スクールソーシャルワーカーの活動と養成
 ■ (関西福祉大学)八木 修司


第2号から、オピニオン的なコーナーを設けました。第1回めは、八木先生によるSSWについてのお話。

第3号はいまのところ思案中ですが、学校臨床全般に対する実用的でテクニカルなリソース集みたいなものにしたいなあ、などと考えてます。

年2回というと、気分的にはかなりじっくりとできる感がありまして、いい雑誌、役立つ雑誌を作っていきたいと思ってます。

ぜひ、ご購読のほう、よろしくお願いいたします。

 

2009年6月10日水曜日

研究会のお知らせです。

 
研究会などのお知らせです。

まず、一つ目。

===

心理療法統合を考える会:
Michael J. Lambert先生をお招きして
効果研究,メタ分析,そして心理療法統合の実証基盤


日時:
 2009年7月12日 
 13時30分~17時30分
 懇親会あり

場所:
お茶の水女子大学(大学本館306室)

参加費:
1000円(資料代)

参加を希望される方・ご質問がある方は、お名前・電話番号・所属を
sepijapan@yahoo.co.jp
にお送りください。
懇親会の参加についても「参加」「不参加」「未定」をお書きください。

とのこと。

主催者:平木典子(東京福祉大学大学院) 中釜洋子(東京大学大学院)
     福島哲夫(大妻女子大学)      野末武義(明治学院大学)
     岩壁 茂(お茶の水女子大学大学院)

====

チラシなど詳しい資料は、小社のHPに掲載しています。
こちらをご覧ください。

http://tomishobo.com/info.html



では、もう一つ。
今度は、うつと社会復帰です。いま話題。

===

うつの講演会「うつと社会復帰」

日時:
 2009年8月2日(日曜)
 13:30~16:30

場所:
 港南区公会堂

内容:
1)外来における復職支援について
 島 悟先生(神田東クリニック・京都文教大)

2)入院における就労・復職支援について
 埜崎健治先生(神奈川県立精神医療センター芹香病院、臨床心理士、精神保健福祉士)

入場無料。

問い合せ先:
横浜市港南区生活支援センター 045-842-6300

====

これについても、チラシなど詳しい資料を小社のHPに掲載しています。

http://tomishobo.com/info.html



うつの社会復帰は、興味深いですね。島先生といえば、この界隈の立役者の一人。EAPにも積極的です。埜崎先生は、PSW的臨床心理士というか、臨床心理士的PSWというか、という方で、いろいろと興味深い活動をされています。

上のランバート先生の講演ですが、これは、寝ても覚めてもエビデンスだ! ウヒャー! などと仰っている方にはぜひ聞いていただきたい講演になるはずです。心理療法のメタ分析において、有名すぎる研究者ですね。目からうろこの研究成果が話されるカモです。
この話題について、熱く語りたいところですが、時間もないのでまた今度です。
 

2009年6月8日月曜日

京都教育大の事件について思うこと

 
京都教育大の事件について、憤りを覚える人も少なくないだろう。私もその一人である。典型的なセカンドレイプというべき事件になってしまった。
犯人たちは鬼畜である。数人がかりというのも始末に悪い。どうしてこういうことをするのか。捕まるのはわかりそうなものじゃないのか。しかも、けっこういい年の、しかもちゃんとした大学の学生である。世にいうFランク大学などではない。どういうことなのだろう。初犯なのだろうかとさえ訝しがってしまう。
そして、学長の記者会見における「教育的配慮」発言だとか、大学当局の対応だとか、犯人たちは退学ですらないだとか、これもまた怒りを注ぐ。さすがにそれはないだろうと思う。冤罪事件なども後を絶たないから、「加害者」とされる人の人権というのも確かにあろうが、被害者はこれでは救われないではないか。被害者は何か悪いことをしたのだろうか?

ともあれ、学長の発言に、個人的にはとても興味がある。どういう経緯でそうなったのかはわからないが、「教育的配慮」として加害者たちの無期停学という措置にし、警察への被害届けの提出をさせず、数カ月も事件を放りっぱなしにした。この件について、学長がどこまで把握していたのか知らない。アホな学生が事件を起こしたということに関しては、学長は被害者であろう。しかし、事件を封印しようとしたところに関しては、これは加害者である。権力を持っているだけにタチが悪い。受験シーズンだったから、受験者数や入学者数が減るとでも思ったのだろうか。
遅すぎる釈明会見のときに学生たちの処分を除籍にし、学長が辞表していたら、この事件はさほど報道されることもなく終わっていただろう。そもそも、事件当時に加害者を処分していたら、話はそれで済んだかもしれない。
学長は「教育的配慮」という言葉を何十回と記者会見で使ったそうである。経験的に、同じフレーズを繰り返すような言い訳は、無茶苦茶な問題を抱えていることが多い。論理がそもそも通っていないのだ。何かを守ろうとしているのだろうか。

リスクマネージメントという意味では、この学長のやり方は最悪であった。そもそもリスクマネージメントという概念があったのだろうか、とさえ思う。記者たちの追撃を交わせると思ったのだろうか。さすがに世の中を見くびりすぎではないだろうか。ちゃんとしたブレーンなり、広報担当はいなかったのだろうか。

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私は、以前、業界紙新聞にいたので、記者会見の雰囲気は知らないでもないのだが、一般紙の社会部の記者たちは、かなり手強い。場慣れもしている。ヤジも飛ばす。言い逃れしようなものならば、「何言ってんだ、ふざけんな」なんて怒声が飛び交います。会見中、笑顔で質問する記者がきつい記事を書くこともある。いくら知的に優れた人であっても、カリスマであろうと、適当な言い訳が通用するような場ではない。

学生たちが事件を起こすということは、稀ではないだろうし、お詫び会見といったものの機会は増えるかもしれない。広告代理店などでも「お詫び会見」に強いパブリシティ会社なんかがあるようで(友人が勤めているのだが)、今後、大学の関係者の方々は、そうした会社とコンタクトをとっておくことも必要かもしれない。困ったことであるが。

 

2009年6月5日金曜日

脳手術後にアーティストとしての才能が目覚めた男性

 
脳手術後にアーティストとしての才能が目覚めた男性

というニュースをネットで見ました。

とても興味深い。

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20090604_brain_sugery_make_artist/


動脈瘤と脳の血管破裂で手術をした男性が、手術後、「絵の才能」が生まれたんだそうで。

うーむ。すごい。

ほんとかな。

うーむ。

ありそうな話、という感じもしないでもありません。

自閉症の子どもで、サヴァン症候群というのか、6歳くらいでえらく細密な絵を描いたりする子がいますね。杉山先生の事例だったか(うろ覚え・資料も見当たらず)、ある日のある時間の絵を何枚にもわたって描き続けた事例がありますが(確か、大きくなったら、絵がうまくなくなっていたりするという話も聞いたけれど……何もかもうろ覚え)、そんなことを連想します。


病気になること、障害を持つことは、奪われることが多いですが、逆に得ることもあるんですね。
となると、俄然、神経心理学の本なんかを紐解きたくなります。
私としては、この界隈においては、もうヤマドリスト、山鳥主義者でありまして、山鳥重先生の最近の本:

知・情・意の神経心理学知・情・意の神経心理学
山鳥 重

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はスリリングな本です。脳とは、心とは、ということが鮮やかに描かれている。

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)
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なんていう本も新書ですが、深い深い。

ヒトはなぜことばを使えるか―脳と心のふしぎ  講談社現代新書ヒトはなぜことばを使えるか―脳と心のふしぎ 講談社現代新書
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という本も拝読しましたが、面白かった。
ちょうどこのころ、私は山鳥先生と時折、ファックスで手紙のやりとりをしていたので、ご恵送いただいたのでした。山内、元気にやっております。

どれもしっかりと書かれた本でありますので、脳とこころに興味のある方はぜひ。

神経心理学や認知心理学や行動科学など、とっても興味深い。そもそも、心理学が面白い、という一面は、やはり、このあたりの学問的蓄積にある気がする。
とはいえ、脳なり、心なり、というだけでは、人間すべては語れませんので、これはこれでなかなか難しい。社会環境が人間を作る、というだけでもないですし。でも、神経心理学は臨床とも深くコミットしているので、有用な知見が生まれ、有用な書き手が輩出されているのだろう。実践のからみが、学問を推し進める力になるわけですね。ま、経済効果という側面もあるのでしょうけれど。

ともあれ、手術後……絵の才能開花というニュースには驚いた。他にもいろいろと同じような事例はあるかもしれない。手術というよりも、リハビリが有効だったのかもしれない。うーむ、どうなんでしょうね。

 

2009年6月1日月曜日

お一人様でどうですか?

 
編集者の仕事はいろいろとある。雑誌を作ったり、書籍を作ったり。専門書編集者の仕事は限られているが、それでも、「臨床心理学」という雑誌を立ち上げたり、鈍器(?)のように分厚く大きい本(「詳解 子どもと思春期の精神医学」)を作ってみたりと、いろいろと経験してきた/させてもらった。挙句の果ては会社まで作ったのだから、編集者としては一通りの(?)ことはやってみたような気になっていた。

ところがである。

そういえば、辞典・事典類を作ってはいないな、とはたと気づいたのである。

昔から事典を作りたいと思っていた。
キーワード集みたいなものはいくつか作った。

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企画だけで制作にはタッチしていないが、

ロジャーズ辞典ロジャーズ辞典
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なんていうのもかすったくらいはしたが、やはり、編集者として生まれてきたからには(生まれてないって)こんな大辞典を作りたい。

心理臨床大事典心理臨床大事典
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精神分析事典精神分析事典
小此木 啓吾 北山 修

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と思うのです。

やりたい。
大変そうですけど、やってみたい。。

あの分野とこの分野とその分野なら、やれそうだな、という腹案もある。
メンバーもうっすらと思い浮かぶ。

当然、事典を作るのはけっこう大変なんですけれど、マネージメントする能力はまあ、あると思う。大量の執筆者を抱えるのは雑誌や大きい本で慣れているし、ネットは便利になったし、製作技術的にもまったく問題はないし、煩雑な作業を合理的かつ建設的に行う知恵(?)もある。用語を一つひとつさらう根気もけっこうある。嫌いではない。

が、しかし、先立つものがない。

要するに資金ですね。これがまだまだ潤沢とは言えないので、踏み切れないでいる。

事典は、やっぱ、お金がかかるんですね。

まあ、たとえば、××学についての事典を作ろうという話になったとします。B5判で800ページのものとかにしますわな。
まずはその分野の碩学なり、政治的な主導者に声をかけるわけです。で、その方を中心に3~4人のメンバーを集めて、編集委員会を作る。
このメンバーはやはり政治的にも地理的にもばらけていたほうがいい訳ですね、当然。
主導者Aさんと、その弟子筋なんていうメンバーだと、色がつきすぎる。AさんのライバルBさんなんていうと、あとで大変になりそうなので、Aさんとは仲はいいが、それなりに違う立場のCさん、Dさん、といった感じでメンバーを決めるわけです。
で、集まるわけですが、手弁当というわけには行きません。交通費だってお支払いする必要があります。編集会議をするんであれば、会議室なんかも使う必要がありますね。食事時でしたら、食事を頼む必要もある。オムスビ4つとタクアンひとかじり、というわけにはいかない。松花堂弁当くらいは用意したい。当然、日が暮れているならば、ちょっとアルコールでも、ということにもなる。
場所は皆が便利なところ。地方の方もおられるのならば、東京駅とか品川駅とか。会議室ドットコムなんていうのもありますが、まあ、ちょっとはカッコウをつけたいですから、ホテルの会議室なんて借りてみたい。
となると、まあ、そうですね、一回の会議で少なくとも会議代だけで20万くらいは見ておきたい。メンバーの地域が広がれば、交通費はもっとかかりますし。
しかし、事典です。項目数が1000だとしても、それをあげるのに一日でできるわけはない。それから、それぞれの書き手を決める必要もある。つまり、会議は、数回行う必要があります。一回じゃ収まりません。3回は必要でしょうか。3回やるとしたら、60万の出費です。

で、執筆者が決まりました。100人います。それぞれの方に依頼状を送る、となると、それだけで1万円。作業としては一日仕事です。返信用の葉書を入れると、15000円くらいかかります。校正刷などの送付にも同額以上の金額がかかりますね。

まあ、こんなものは知れたものです。
問題はこの次。

で、できた本が800ページのB5判だとしますと、この印刷代がものすごくかかるわけです。
計算してみたことないですけれど、1000部刷って、500万で足りるのかな……。

本って、書店さん経由の場合、売れてから半年後に入金という、まあ、何それ、という商慣習がまかり通っている世界なのですが、その半年のタイムラグを考えると、印刷代以上の資金がプールされていないと、経営的には厳しいものがあります。

もちろん、人件費もかかります。
それ以上に時間も。。。


うーん、難しい。

バックに学会などに入ってもらって、学会監修の事典なんていうものができるのなら、会議費が不要になるので、これはありがたいかもしれません。売れ行きも読めるので、500万も投資できるでしょうし。
なんて、夢を見たりし。

うーむ。ただの夢だしな、これでは……。


なら、一人事典なんてどうですかね。

実は以前からある大家の先生に「一人で事典を作られてはいかが」とお願いしていた。でも、そのお願いからもう10年近くたつ。会うたびに「すまぬすまぬ」謝っておられるが、執筆されているのか、その気配はない。

とはいえ、一人で事典を作るのは、学者の夢ではないかと思う。名遂げた末の夢。
いや、なんか勝手に夢を押し付けているみたいで申し訳ないが、400項目、500ページくらいの中版の一人事典なんてあったら面白いなあ。
500ページまでいかなくとも、その半分くらいでも十分だ。
このサイズなら、比較的小さな学問体系でもできなくはない。「自殺」とか、「DBT」とか、「対象関係論」とか、「河合隼雄」とか。キーワードが200くらいあがれば、いいのだろうか。

ぜひ、我こそはと思う方は、どうかおっしゃってください。お手伝いします。